犬にビフィズス菌は必要?研究でわかっていることと、食事でできること
「犬にもビフィズス菌っていいんだよね?サプリやヨーグルトで摂らせたほうがいいのかな」——腸活という言葉をよく見るようになって、そう考える飼い主さんは増えています。一方で、「健康なうちの子に、本当に必要なの?」という素朴な疑問も、きっとありますよね。
先に結論をお伝えすると、ビフィズス菌は犬の腸にもいる善玉菌のひとつですが、「健康な犬すべてに一律で必要」と言い切れるほど強い研究の裏づけは、今のところ多くありません。そして、犬の腸にいる菌は、人やヨーグルトでおなじみの菌とは「種類」が違うこともわかってきました。
この記事では、犬とビフィズス菌について獣医学の査読論文をもとに、わかっていること・わかっていないことを中立的に整理します。サプリやヨーグルトを選ぶ前に、知っておくと判断がラクになるはずです。
- ビフィズス菌は犬の腸にもいる善玉菌。ただし腸内の「主役(優占菌)」ではなく少数派
- 犬の腸に定着しやすい菌は、人やヨーグルトの菌とは種類が違うことが報告されている
- 健康な犬に一律で必要という強い研究の裏づけは、現時点では限られている
- 「足す」だけでなく、食事で“いる菌”を育てるという考え方も注目されている
- 迷うとき・体調に気になる様子があるときは、かかりつけの獣医師に相談を
ビフィズス菌とは?犬の腸での位置づけ
ビフィズス菌とは、人や犬の腸内にすむ善玉菌の一種で、糖をエサに乳酸や酢酸をつくり、腸の中を弱酸性に保つことに関わる菌です。ただし、犬の腸の中では「いちばん数の多い菌」ではありません。
犬138頭の便を解析した研究(Alessandri ら, 2020)によると、犬の腸内細菌叢で多くを占めるのはバクテロイデスやフソバクテリウム、プレボテラといった菌で、ビフィズス菌は数のうえでは少数派でした。さらに、ビフィズス菌は種類のレベルで「どの動物の腸に定着しやすいか」が分かれていて、犬には犬に適応した菌種がいることも示されています。
乳酸菌とビフィズス菌は、何が違う?
よく一緒に語られる2つですが、住んでいる場所と作るものが少し違います。乳酸菌はおもに小腸ではたらき乳酸をつくるのに対し、ビフィズス菌はおもに大腸にすみ、乳酸に加えて酢酸もつくるのが特徴です。どちらが上ということではなく、役割が異なる、というイメージです。
犬の腸では、ビフィズス菌は「主役」ではなく少数派。だからこそ、いる菌の種類とバランスが大切になります。
— Alessandri G, et al. Applied and Environmental Microbiology, 2020(犬138頭・猫23頭の糞便メタゲノム解析)
犬にビフィズス菌は「必要」?研究が言っていること
結論から言うと、健康な犬に一律でビフィズス菌を補う必要がある、と言い切れるだけの研究は、現時点では限られています。「ビフィズス菌入り=それだけで良い」と強くうたう情報も見かけますが、研究はそこまで言い切っていません。実際に変化が比較的はっきり見えているのは、おもに「お腹の調子をくずしている犬」を対象にした研究です。
たとえば、急にお腹がゆるくなった犬に犬由来のビフィズス菌(Bifidobacterium animalis AHC7株)を与えた比較試験(Kelley ら, 2009)では、便がふだんの状態に戻るまでの日数が短くなったと報告されています(およそ6.6日→3.9日)。また、同じ菌株を成長期の犬に12週間以上、高めの量で与えても安全性に問題は見られなかったという報告(Kelley ら, 2010)もあります。
健康な犬を対象にした研究もあります。ビフィズス菌を14日間与えた試験(Strompfová ら, 2014)では、便の中の菌のバランス(乳酸菌が増え、大腸菌群が減るなど)や、腸の状態に関わる成分(有機酸)の量に変化が見られました。ただしこれは「症状が良くなった」という話ではなく、あくまで検査でわかる指標の変化です。
ここで紹介した研究は、いずれも特定の菌株を、決まった量・期間にわたって与えた臨床試験の結果です。市販のヨーグルトや食品全般が同じはたらきをする、という意味ではありません。「研究で変化があった」=「うちの子のヨーグルトにも同じことが起きる」ではない、という距離感で読むのが安全です。
国内でも、2025年に特定のビフィズス菌(G9-1)と乳酸菌(KS-13)を犬に42日間与えた研究が発表され、便のにおいの指標などに変化が見られたと報告されています(大正製薬, 2025)。これも特定の菌株・一定量・一定期間という条件つきの結果で、すべての菌や食品に当てはめられるものではありません。
犬の菌は、人やヨーグルトの菌とは「種類」が違う
犬の腸に定着しやすいビフィズス菌は、人やヨーグルト由来の菌とは種類や性質が異なることが報告されています。「人用ヨーグルトのビフィズス菌を、そのまま犬の腸に届ける」という発想は、じつはそれほど単純ではありません。
犬の腸から取り出したビフィズス菌(B. animalis ssp. lactis)を調べた研究(Bunešová ら, 2012)では、犬由来の菌株は、腸への定着に関わる自己凝集能(菌どうしが集まる性質)などで、犬の腸に適応した特徴が見られました。同じ「ビフィズス菌」という名前でも、どこから来た菌かによって性質が違うということです。
つまり、犬のことを考えるなら「ビフィズス菌入り」という言葉だけで選ぶのではなく、犬を想定して設計されているかという視点が役に立ちます。人の食品をそのまま流用するのとは、少し話が変わってきます。
「年をとると減る」って本当?加齢とビフィズス菌のわかっていないこと
人では「加齢とともにビフィズス菌が減る」と言われますが、犬で同じことを数字で断定できるだけのデータは、まだ十分ではありません。ここは正直にお伝えしておきたいところです。
犬の腸内細菌叢が、成長や食事の内容とともに変化することは報告されています。一方で、ビフィズス菌の量には性別や個体差による開きも大きく、「シニアになったら一律で減るから足すべき」と単純に言えるほど、犬の縦断的なデータは揃っていないのが現状です。
ですので、シニア期の食事を考えるときも、「年齢」だけで判断するより、その子の便の様子や食べ方を見ながら選んでいくのが現実的です。気になるときは獣医師に相談するのがいちばん確実です。ヨーグルトの与え方の基本は、犬とヨーグルトの完全ガイドでもくわしく整理しています。
【観察記録】YOGUPOをつくる現場から
ここからは、犬用ヨーグルトYOGUPOをつくっている立場からの、正直なお話です。あくまで個別の観察やつくり手の考えで、すべての子に同じことが起きると保証するものではありませんが、判断の材料のひとつとしてお読みください。
YOGUPOには、乳酸菌・ビフィズス菌・オリゴ糖を配合しています。ただ、ここまで見てきたとおり、「ビフィズス菌が入っている=腸に必ず良い変化が起きる」と約束できるものではありません。私たちも、菌の効果を大げさにうたうことはしないようにしています。配合しているのは事実、でもそれがどう働くかは個体差がある——その距離感で受け取っていただけたらと思います。
つくり手として、ひとこと
YOGUPOで私たちがいちばん気をつかっているのは、菌の数を競うことより、犬のお腹にやさしい設計であることです。人間用ヨーグルトの乳糖は犬には多すぎることがあるため、YOGUPOはチーズ由来の酵母を加えて乳糖を99.9%まで分解しています(YOGUPO製造記録より。乳糖の分解率は社内および第三者検査機関による計測)。原料には鳥取県産の牛乳を使い、無糖・保存料不使用で、人の食品と同じ衛生基準の工場でひとつひとつ手づくりしています。
「カリカリだけでは食べず困っていたところ、ごはんにかけてあげると大喜びで食べてくれました。今では容器を見せただけで喜びます。」
— 廉ちゃんの飼い主さん(YOGUPOレビューより)
「食に淡白で、なかなか食事をしない子なのですが、YOGUPOを見るとすぐお座りして夢中で食べ続けます。」
— 幸太くんの飼い主さん(YOGUPOレビューより)
※上記は個人の感想・観察例であり、特定の変化や効果を保証するものではありません。
「足す」より「育てる」?食事でできること
菌を「足す」だけでなく、毎日の食事で“いまいる菌”を育てるという考え方も、研究で注目されています。外から菌を入れることだけが、腸内細菌との付き合い方ではありません。
健康な犬に、機能性成分(パイナップル由来の酵素やケルセチンなど)を含むサプリを28日間与えた研究(Atuahene ら, 2024)では、便の中のビフィズス菌や乳酸菌が増え、その変化は与え終わったあともしばらく続きました。また、犬の腸内細菌叢は、高たんぱくか高炭水化物かといった食事の内容によって大きく変わることも報告されています(Alessandri ら, 2019)。「何を食べるか」が、菌のバランスに関わってくるということです。
家庭でできる、いる菌を育てる工夫の例を挙げておきます。
- 食物繊維を含む食材を少し取り入れる:さつまいもやかぼちゃ、野菜など。善玉菌のエサになる成分(プレバイオティクス)として知られています。与えすぎず、便の様子を見ながら。
- 発酵食品を“補助”として少量:無糖ヨーグルトなどを、主食ではなくトッピングとして少しだけ。乳糖に配慮したものを選ぶと、お腹がデリケートな子にも取り入れやすくなります。
- 食事を急に変えない:フードを切り替えるときは1〜2週間かけて少しずつ。急な変化は、便の様子に影響することがあります。
ヨーグルトを与えるときの、体重別の量の目安
ヨーグルトはあくまでトッピング・補助の位置づけで、総合栄養食の代わりにはなりません。体重に応じた少なめの量から、便の様子を見て調整するのが基本です(無糖ヨーグルトの場合の一般的な目安)。
〜5kg(小型犬)
1日 小さじ1〜大さじ1杯(約5〜25g)が目安。チワワやトイプードルなど。はじめは小さじ1から。
5〜15kg(中型犬)
1日 大さじ1〜2杯(約25〜50g)が目安。柴犬やコーギーなど。
15kg〜(大型犬)
1日 大さじ2〜4杯(約50〜100g)が目安。ラブラドールやゴールデンなど。
※目安量です。はじめての場合は表示量の半分程度から慣らし、便の様子を見ながら調整してください。
下痢やお腹のゆるい状態が続く・元気がない・食欲が落ちている・嘔吐をともなう——こうしたときは、自己判断で菌やヨーグルトを足す前に、かかりつけの獣医師に相談してください。持病がある子や療法食を食べている子、お薬を飲んでいる子も、与えてよいかを事前に確認すると安心です。
ヨーグルト・サプリ・ビオフェルミン、どう違う?
「結局どれを選べばいいの?」という方へ。それぞれに向き・不向きがあり、どれが正解という話ではありません。中立に特徴を整理します。
犬用ヨーグルト
水分やうるおいも一緒に摂れ、食いつきの補助になりやすいのが特徴。犬を想定して乳糖に配慮した設計のものを選ぶと、お腹がデリケートな子にも取り入れやすい。トッピング・補助の位置づけ。
犬用サプリ・プロバイオ
菌種や量が決まっていて、与える量を管理しやすいのが利点。犬由来株を使った犬用設計のものがある。何を目的に選ぶか、獣医師に相談しながらが安心。
人用のビオフェルミン等
自己判断での流用は避けたいところ。量や成分が人向けで、犬には適さないことがある。使う場合は必ず、種類と量をかかりつけの獣医師に確認を。
大切なのは「ビフィズス菌入りかどうか」だけで決めないこと。犬を想定して設計されているか、量を管理できるか、その子のお腹に合うか——この3つで見ると選びやすくなります。ヨーグルトの基本的な選び方は犬にヨーグルトを与えるときの基本もあわせてどうぞ。
よくある質問(FAQ)
健康な犬にも、ビフィズス菌は与えたほうがいいですか?
「健康な犬すべてに一律で必要」と言い切れるだけの研究の裏づけは、現時点では限られています。元気で便の様子も安定している子に、無理に足す必要はありません。気になる場合や、お腹をくずしやすい子は、与えてよいかをかかりつけの獣医師に相談するのがおすすめです。
犬に人間用のヨーグルトを与えてもいいですか?量は?
人用ヨーグルトは乳糖が多く、犬によってはお腹がゆるくなることがあります。与えるなら無糖タイプをごく少量から。小型犬なら小さじ1程度から始め、便の様子を見て調整してください。乳糖に配慮した犬用のものは、お腹がデリケートな子に取り入れやすいでしょう。
ビフィズス菌は犬の腸に「定着しない」「意味がない」と聞きましたが?
外から入れた菌の多くは長くは住みつかないと考えられており、その意味で「定着しにくい」のは確かです。ただし研究では、与えている間に便の中の菌のバランスに変化が見られた例も報告されています。「住みつかせる」というより「通りながら関わる」イメージで、過度な期待も過度な否定もせず付き合うのが現実的です。
乳酸菌とビフィズス菌は、どちらがいいですか?
どちらが上ということはありません。乳酸菌はおもに小腸、ビフィズス菌はおもに大腸ではたらき、つくる成分も少し異なります。役割が違うので、特定の一方だけを重視するより、食事全体のバランスで考えるのがよいでしょう。
子犬やシニア犬に与えても大丈夫ですか?いつから?
月齢の低い子犬や、持病のある子、療法食中の子は、自己判断で与える前に獣医師に相談してください。シニア犬も「年齢だから減る」と決めつけず、その子の便や食べ方の様子を見ながら、少量から取り入れるのが安心です。
この記事のまとめ
- ビフィズス菌は犬の腸にもいる善玉菌だが、数のうえでは少数派
- 犬の腸の菌は、人やヨーグルト由来の菌とは種類・性質が違うと報告されている
- 健康な犬に一律で必要という強い裏づけは、現時点では限られている
- 研究で変化が見えやすいのは、おもにお腹の調子をくずした犬を対象にしたもの
- 「足す」だけでなく、食事で“いる菌”を育てる視点も役に立つ
- 迷うとき・気になる様子があるときは、まずかかりつけの獣医師へ
・Alessandri G, et al. Deciphering the Bifidobacterial Populations within the Canine and Feline Gut Microbiota. Applied and Environmental Microbiology, 2020.
・Alessandri G, et al. Metagenomic dissection of the canine gut microbiota by diet and host genetics. Environmental Microbiology, 2019.
・Kelley RL, et al. Clinical benefits of probiotic canine-derived Bifidobacterium animalis strain AHC7 in dogs with acute idiopathic diarrhea. Veterinary Therapeutics, 2009.
・Kelley RL, et al. Safety and tolerance of Bifidobacterium animalis strain AHC7 in dogs. Veterinary Therapeutics, 2010.
・Strompfová V, et al. Effect of Bifidobacterium animalis B/12 administration in healthy dogs. Anaerobe, 2014.
・Bunešová V, et al. Bifidobacterium animalis subsp. lactis strains isolated from dog faeces. Veterinary Microbiology, 2012.
・Atuahene D, et al. A Supplementation with a Bromelain/Quercetin/Mushroom Blend modulates the faecal microbiota of healthy dogs. Animals, 2024.
・大正製薬 ニュースリリース(犬とビフィズス菌・乳酸菌に関する研究, 2025).
・YOGUPO 製造記録・お客様レビュー(2024-2026)
※本記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。気になる症状は獣医師にご相談ください。記事内の研究は特定の菌株・条件下での結果であり、食品全般の働きを示すものではありません。